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伝承昔話(でんしょうむかしばなし)

赤沼のおしどり(あかぬまのおしどり)

郡山市
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    伝承昔話(でんしょうむかしばなし)

紹介説明(しょうかいせつめい)

郡山市中田町赤沼字杉並(なかたまちあかぬまあざすぎなみ)の県道のかたわらに、二つの古い碑(ひ)があります。これが、むかしから「おしどりの碑」といわれたもので、碑の東南一帯(とうなんいったい)の水田が、昔の赤沼のあとであるといわれています。

 みちのくの田村のさと、赤沼の向こうの森に、秋の日は落ちようとし、辺り一面、夕やけがそめ、沼辺(ぬまべ)のマコモの葉が、かすかにゆれるころ、そこに一人の男が足をとめた。その名を「うまのじょう」といい、赤沼の館(やかた)の城主(じょうしゅ)、赤沼弾正(あかぬまだんじょう)四代目のまごにあたる人である。
 男はいつものように、獲物(えもの)をさがして、山野をかけ回っていたが、何一つ獲物がなく、がっかりして、赤沼のほとりまで来て、沼にうつる夕日をながめていた。
 すると、足元から続くマコモの葉が、ガサゴソと動いているのに気がついた。男は、今度こそはと、ねらいを定めて弓を引いた。矢はたしかに獲物に当たったらしく、そのあたりの水音が、はげしく聞こえた。男は、マコモをかき分けて近ちかづくと、それは、一羽(わ)のおしどりであった。男は、よろこんで山小屋に引き上げた。
 その夜のことである。男が寝(ね)ていると、どこから入ってきたのか、一人の美しい女が、まくら元にすわってさめざめと泣いているのであった。男は、ふしぎに思い、
「どうして、そんなに泣いているのか。」とたずねると、女は泣きながら、
「あなたは今日、長い間、連れそってきた私の夫を、殺(ころ)してしまいました。私は悲しくて、生きる望(のぞ)みがありません。」と、言うのである。その顔は、あくまで白く、その白いほおをなみだがひとすじ、ふたすじ、こぼれて落ちた。そして、
『日くるれば さそいしものを 赤沼の まこもがくれの ひとり寝ぞうき』
と和歌(わか)を一首口ずさんで、また、どこへともなくすがたを消してしまった。
 男は、ゆめを見たのであった。朝になると、男は
「もしかして私が弓で射(い)たおしどりのことでは…。」と思った。深い霧(きり)の立ち込める朝であったが、男は、重い気持ちにひかれるように、昨日、おしどりを射止(いと)めた赤沼のほとりに行った。
 すると、そこに、男は、痛ましい光景(こうけい)を見た。メスのおしどりが、自分のくちばしで、はらの辺りをつきさして死んでいた。男は、なんともいえない深い後悔(ざんげ)の気持ちにおそわれた。
 男が、赤沼を後にして、長い旅に出て行ったのは、それから間もなくであった。赤沼のさとに、早い冬がおとずれようとしている寒い朝のことであった。
 その後、男は出家(しゅっけ)したといううわさが、村人の間に広まったということである。

資料・他(しりょう・ほか)

『福島の伝説』福島県国語教育研究会編集

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